夢を目指した親子インタビューvol.2【バレエスタジオ主宰・針山祐美先生】
『バレエをやったからこそ、その次の選択肢を選べるんです。』
バレエスタジオ主宰・針山祐美先生インタビュー
バレエダンサーのキャリア形成を応援する親子のメンタルコーチⓇLupinus添田敦子です。
今回は、神奈川県川崎市のバレエ・ジャズダンススタジオ
「ワイダンスカンパニー」
を主宰する針山祐美先生の『キャリアへの想い』をご紹介します。
祐美先生は、ロシアのバレエ留学を終えて帰国し、劇団四季に入団して舞台活動に励んだ後、
講師業に転向して主宰するスタジオをオープンされました。
ロシア留学時代の友人たちと
子どもから大人まで、プロを目指す方から健康維持のために通う方まで集まり、
ひとりひとりがバレエやダンスを生かして、『その方らしいキャリア』を積めるよう支援しています。
ご自身もテレビCMに出演するなど、国内外でバレエを軸として多面的に活躍されています。
私生活では乳がんを乗り越えた経験も持たれます。
祐美先生は三姉妹の次女として生まれ、海外バレエの世界でご活躍のお姉さん、妹さんがいらっしゃいます。
ご自身も海外留学を経験され、その後同じ様に海外のバレエ団へ就職する道もありましたが、日本へ帰国する道を選びました。
留学を目指すバレエ少女時代
この話の限りでは、なぜ日本の多くのバレリーナ達が憧れる
「海外バレエ団での活動」を選ばずに帰国したのだろう?
と疑問に感じる方もいるかも知れません。
今よりも留学が難しかった時代にロシアへのバレエ留学を実現させながら、なぜ帰国する道を選んだのか。
そして、なぜ「スタジオ主宰」だったのか。
乳がんを乗り越え、海外と日本を行き来しながら生徒のサポートをこなすパワーの源はどこからあふれてくるのか。
祐美先生の行動力の原点に迫ります。
海外のバレエ団で働くことはとても魅力的。でも、海外の生活に魅力を感じられなかった
「姉がまず留学を始めて、その時は私も行きたくて行きたくて仕方がなくて、本当に留学にあこがれていたんです。」
祐美先生が中学校に在校していたとき、お姉さんが既にロシアへ留学をしていました。
その後、祐美先生も短期留学に行き、長期留学をする道も、オーディションを受ける機会もあったそうです。
しかし当時、留学先のロシアの情勢がとても悪化していて、留学先の学校によっては外出禁止令が出されていたほどでした。
情勢混乱を受けて、バレエの先生の勧めによって帰国することに。
日本の高校に進学されました。
卒業後の進路を真剣に考えた時、当時すでにお姉さんがそうしていたように、
「海外のバレエ団で働く」というキャリアの選択肢もありましたし、
受け入れてもらえるバレエ団も複数あったそうですが、祐美先生はここで決断をしたのです。
「仕事をするということはそこにずっと長く住んでいくということでもあるし、
海外で暮らしていくよりかは、日本で生活したいと考えました。
私は舞台人として舞台に立つ仕事がしたかった。だから、劇団四季というところに行き着いたんです」
実は、高校2年生の時に、長野オリンピックの開会式で踊らせて頂く機会に恵まれ、
そのリハーサル会場が、劇団四季でした。
長野オリンピック会場にて
その毎日公演が行われている環境に魅力を感じ、
海外でのバレエ団生活の状況を見たうえで、ご自身の意思で日本で働く道を選び、
バレエのキャリアを活かして劇団四季へ入団されました。
子ども達の多様性をすぐそばで応援したい。
キャリアを積んだからこその「今」
バレエ留学から、劇団四季へ。
一本道のキャリアではなく「転向」を選んだ祐美先生は、
劇団員としてのプロフェッショナルを磨き、やがてご自分のスタジオを開くことになります。
日本には今までないような、バレエだけではなく、バレエも習えてミュージカル舞台も習うことができ、
興味のあるエンターテイメントを様々チョイスできて、いろんな方向に行けるスタジオを開きたくてオープンさせたそうです。
それぞれの分野のプロフェッショナルの先生を呼び、
バレエを軸にジャズダンスや、タップなどのダンス、
ミュージカル(歌や演技)などのスキルやセンスを磨くカリキュラムを充実させています。
スタジオに集まる子達が目指す将来は、とてもバラエティに富んでいます。
それは先生ご自身が、弱冠10代でキャリアの転向を選び、
『バレエを生かして』今を生きていらっしゃるからこそに違いありません。
「本当にダンスが好きで来ました。」
「バレエが好きです。バレエ団に入りたい!」
「留学したいです。」
「劇団四季入団を目指します!」
「ディズニーランドで踊るダンサーになりたいんです!」
生徒さん達の様々な希望を聞くにつけ、祐美先生ならではのアドバイスで生徒を導きます。
「実際に私も転向してきたことがあるから実際にアドバイスをあげられるし、
私と同じように、『教えることをやりたい』という子もいます。
教えることに魅力を感じて、『私は最初から教えたい!』という子もいますね。
教えるということも素晴らしいことなので。
その他にも、芸能人、アイドルになった子もいますし、
バレエをやってきて、劇団四季に転向しますという子もいます。
スタジオでは演技や歌の指導もやっていますから、
演技、歌をやり始めたら今度は演技にハマって劇団に入った子もいますし、
裏方に行った子もいますね。
翻訳とかプロデューサーになった子もいるんです。」
我が子を笑顔で見守る『母の愛』。
口出しせず、背中を押してくれた。
時に進路というものは、親子の『お互いへの想い』を浮き彫りにします。
そして、兄弟姉妹はまわりから比較して見られることも多いもの。
兄弟姉妹のいる多くの方が共感するところではないでしょうか。
祐美先生はその点、明確な意思でご自身のキャリアを積んでこられました。
先生のキャリア形成で欠かすことができないのは、
その時々で子ども達の選択を尊重しながら応援してくれたお母様の存在です。
お母様の天真爛漫な雰囲気が伝わる親子ショット
お母様はなんと今、祐美先生のスタジオでバレエのレッスンを受けていらっしゃいます!!
その他、バレエには音楽性が大切なので、
スタジオに通われる生徒様にピアノや音楽の指導をされたり、
講演会があれば、受付に手伝いにも来られるなど、とても良好な親子関係を築かれているようです。
「(そのまま海外には残らず)当時、帰国すると伝えたときも、親は何にも言わなかったですね。
本当に自由にさせてもらっていて。姉も海外に行っていて私たち(妹さんと祐美さん)も行くのかな? という感じで行きましたが、
私は仕事の拠点として日本を選び、劇団四季に入って、毎日違うところで公演させてもらっていて。
また、母は私たちの留学費を作るためにお花屋さんでも仕事をしていたのですが、
『お花屋さんの仕事が楽しい』とか言っていました。
後から聞いたのですが、子供の夢の為ならって想いがその言葉に集約されていたんです。
その後、私が劇団四季に入ってからミュージカルを見においでと誘ったら、すごく楽しんでくれました。
”子ども達がいろんな所に呼んでくれてすごく楽しい”と言っていましたね。」
病気を経験して変わったこと。「軽やかに、どんどんやる」
今でこそ先生はスタジオを軌道に乗せていらっしゃいますが、やはりここまでに来るには簡単な道のりではなかったといいます。
先生の人生の大きな山のひとつは、「がん」でした。
それが分かったとき、ご本人は意外にも淡々としていたそうですが、
ご主人やご家族のほうが気落ちしてお母様も不安だったそうです。
ですが、先生はそのことによって悲観的にはならず、
むしろ逆に色々なことに対してのスタンスが軽くなったとのことでした。
人生は一度きりだからこそ、
「やれることをみんなやっちゃおう!」
といったスタンスになったことが、今の祐美先生の原動力であるようです。
支え続けてきてくれたお母様は、
当初、祐美先生のスタジオが軌道に乗ることは信じてた分、特に心配はしなかったのですが、
病気の事に関しては、やはり心配し、どんな事でもサポートしようと決意したそうです。
祐美先生は常に「しっかりやっているから心配しないでね」とお母様に伝え、
自分が一番やりたくて必要だと思うこと、つまりスタジオに通う生徒達の夢のサポートに力を注ぎました。
その道に邁進できる理由は、祐美先生の原動力である「夢」があるからでした。
バレエをやって、コンクールで入賞して、海外のバレエ団に入るだけが道ではないはず。
「日本」でも技術や教養を磨ける環境を作りたい。
祐美先生のこれからの望みや夢を聞いてみました。
「バレエをやってコンクールに出て入賞して海外行ってバレエ団入ってだけが道じゃないと思うんです。
そこからたくさんの道が枝分かれできるので、それにしっかり対応してあげたいなと思います。
『これしか手伝えないよ』じゃなくて、できるだけ広い範囲でサポートをして、
視野を広げてあげたり、実際現地にいきたいということならそのサポートもやってあげたいですね。」
生徒さんや親御さんと接する中で、思うところがあると言います。それは・・・・・・
「どうしても、日本にいる子ども達は保守的になりやすいと思うんです。
そこでお母さんが不安になるんじゃなくて、『こうやってみようよ』と背中を押してあげて欲しい。
チャレンジして失敗することなんて失敗じゃないと思います。
怖がらずになんかやった方が私はいいと思うんです。それが経験になりますから。」
先生自身がその体現者でもあることから、
子どもたちを育てる「教育」にとても力を注いでいきたいと強くお話しされました。
日本で生まれ育ったバレエダンサーは、『私は本気でやりたい』となったとき、海外に行かなければならない。
今はそういう状況なんだと思います。
日本の中できちんと色々なことを学べる環境がないから、みんな海外の国立のバレエ学校とか目指すわけですよね。
でも、そういう『(きちんと学べる)場所』が日本にも必要になってきているんじゃないかなとて思っているんです。
できることをやっていきたいですね。
海外留学していると、食生活から変わります。
それに加えて女性的なホルモンのバランスが変わる時期に不具合を感じたとき、
親御さんと離れていて体の不調も相談できなかったりすると、体調が狂ってしまうんです。
一番多いのは太ってしまって体のコントロールができないことです。
できなくて当たり前なんです、10歳とかそんな時期ですから・・・・
ただ、留学するのは海外の異文化に触れて、色々なことを見るだけでも価値があります。
現地の人との交流も素晴らしいことですが、現地に行く=母国を離れて住むという、
『バレエ以外の大変さ』については思うところが色々とあります。
誰でもうまくいくわけではありません。日本ででできることを増やすために動きたいんです。
「バレエ経験」があるから、人生にプラスに働く!
祐美先生は、「バレエの経験は、その先のバレエの経験だけではなく、色々なことに生かされる」とおっしゃいます。
この言葉に先生の今の活動が集約されているように思いました。
バレエのキャリアはやっぱり色々なところで活きてきます。
受験の面接で、『いままでバレエやっていた』とか、『海外に留学をしたことがある』とか、『コンクールに参加した』とか、
うちは国際ダンスフェスティバルとかに団体で参加しているんですが、
そういう一般的にあまり行く機会が無いような国に行って舞台に立った話などをすると、面接の場がとても盛り上がるそうです。
面接官さんが、びっくりしていろいろ興味を持ってきてくださって、
面接の満足感がすごくあるようです。
実際に、そうだろうなと思います。
バレエの経験はいろんなところでプラスに働いているんだと思います。
だからこそ、これからもたくさんの生徒を応援していきます。
インタビュー後記
祐美先生、このたびはお話しを聞かせて下さりありがとうございました。
バレエのセカンドキャリアを支援する立場として、先生のインタビューに寄せた所感を書かせてもらいます。
10代、20代前半まで、「子どもから大人にかけて一番変化する時」に、
バレエ経験という宝物を持つと、子ども達はそこに打ち込んできたからこそ「それしか道がない」と思い、
知らず知らずのうちに自分の気力と体力が噛み合わなくなってきてもムリしてしまい、身体を壊してしまうこともあります。
自分の道が一本突き進んでいるときは確かに素晴らしいものですが、
「何かが起きたとき」「コレまで通りに行かないとき」があるならば、それが人生の試され時であり、
結果的に、バレエ経験と同じくらいの宝物の体験になる可能性もあるんです。
望みが思い通りに叶うことがあっても素晴らしいし、誰もが憧れるバレエ留学が実現したならそれも素晴らしい。
けれども、その先どんな道筋があるか?というところで多くの子は迷います。
バレエの世界は、特にプロを目指す子達は10代のうちにキャリア10年を超えることも少なくありません。
続けた先の進路のひとつが「海外バレエ団での活躍」かもしれませんが、
決して「それだけが道」ではないものの、進路に悩む子達が少なくないことを目の当たりにしています。
応援する親御さんもまた、「せっかくここまで習わせたのだから」と焦る方もいらっしゃいます。
確かに、トントン拍子で就職していく人もいれば、苦労する人もいます。
どれも、その人にしか歩めない人生。
正解はなく、その時その時の「自分が選べるキャリア」が、5年前の自分の思い描いた道とは一致しなくても、大丈夫。
なによりも一番は本人が後悔しないことであって、
楽しんでいたらいつの間にか思わぬ未来にたどり着くこともあるし、
アレ? と思ったら、そのとき考えればいいこと。
私自身、この人生でいくつもキャリアチェンジしていますが、後悔はありません。
インタビューの際に祐美先生のお母様ともお話しさせてもらいましたが、
「その時その時を楽しんで、子どもを応援する」スタンスが大変すばらしいと感銘を受けました。
これからますます、子ども達の夢は多様化していくでしょう。
総合的な「人間力」を高めることのできる「バレエ」の経験は、
決してバレエを続けるためだけにしか活かせないわけではないはず。
「バレエのセカンドキャリア」を自ら体現されている祐美先生に、非常に興味深いお話しを伺うことができました。
ここで改めてお礼申し上げます。
祐美先生の本年度は夢を実現する行動に出ていらっしゃるようです。
その様子は、今後も引き続きお伺いし、
記事をお読みいただいている皆さまへお届けします。
ぜひ、お楽しみに!
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