バレエダンサー新たなキャリアインタビュー【プロバレリーナ内田千裕さん】
バレエダンサーのキャリア形成を応援する親子のメンタルコーチⓇLupinus添田敦子です。
今回は、現役のプロバレエダンサー内田千裕さんの「出産と現役をつづけること」についてのインタビュー記事です。
内田さんはシンガポール唯⼀のプロバレエ団「シンガポール・ダンス・シアター」でプリンシパルを務められています。
以前は、プロの夢を叶えた内田さんと、お母様へのインタビュー記事を公開しました。
(その記事は⇨こちら)
内田さんのご紹介と、今回のインタビューのトピックスはこちらです。
・シンガポール唯一のプロバレエ団「シンガポール・ダンス・シアター」で2005年からプリンシパルを務められ、2019年で歴14年
・ご夫婦ともにプロのバレエダンサー
・2019年末に第一子を出産予定
・妊娠中も、所属先のバレエ団の協力や理解を得てお仕事続行中
・復帰を見据えて身体を動かしながら、マタニティライフを充実させている
・出産「後」も、現役を続ける予定
出産や仕事のこと、今のお気持ちを伺いました。
シンガポールにてインタビューの様子
初めてのマタニティ生活は、体を動かしながら
添田「今は、まずは元気な子を産むというのが大事ですよね。千裕さんはこれからどうしたいかなどありますか?」
内田さん「そうですね、まずは元気な子を産んで。どうなるかわかりませんが、復帰を目指しています。本当にどうなるかわかりませんが。」
添田「最近ではインスタグラム(Instagram)とかでも、ヨーロッパの国の人で、出産後に復帰している姿をアップしている人もいますよね。」
内田さん「そう、それを励みにしています。“もう、みんなはどうやってやっているんだろう?”と思いますが。
できないことはないんじゃないかなと思っていて、だから今も体を動かしています。
妊娠初期のころから医師には相談していて、あとは自分の判断で無理しすぎていないだろうと思う範囲で、やっているのですが。
ここまで赤ちゃんも順調に成長してくれているので大丈夫なのかと。
妊娠する前までがすごい動いていたので、周りの方の意見やGoogleでサーチする限り、
“以前から動いている人は、体がそれに慣れているから、過度な運動じゃなければ、問題ない”
などの話があったので、それを信じながら、体調とも相談してトレーニングを続けています。」
(添田 注※ 内田さんは周りの方に相談されながら自己の責任の範囲で体調をみながらトレーニングを続けられているそうです。)
添田「確かにそうだと思います。私も初めて上の子を出産する前、妊娠7カ月ぐらいになった時も、真剣に取り組んでいたテニスを軽く続けていました。」
内田さん「大丈夫だと思っています、体が慣れているから。これまでも、すごくハードにやっていましたが今はもうジャンプもしていないので、その分体も休まっているし、無理もしていないしメンタルもリラックスしているし。ピルエットとか、気を付けながらやっています。
重さがあるので勢いをつけにくいのですが、バランスはどんな時でも見つけるのは大変というか、普段からバランスは探り探りなので、そういうプロセスは変わりはなくて。
センターを見つけることは、妊娠前に思っていたよりは難しくないと感じています。
やっぱり、立ち方などはお腹が前にある分、腰も反ってきそうですし、そういうところを気を付けながら、面白いですよ。」
添田「お母様は何ておっしゃっていますか?こうやって(妊娠中も)動かれていることに関して。」
内田さん「母も、私が動いているのは知っていますが、静かに見守ってくれているようです。もうそろそろスローダウンしてやっていきたいなと思っています、無理せずに。」
添田「体重はどれくらい増えましたか?見た目でも、全然太っていないですよね。」
内田さん「体重は7キロ増えました。ちょうどドンキホーテの舞台中に妊娠がわかったのですが、その時一番忙しくて細かったので、そこから7キロ増えています。どれだけ細かったんだろうと思いながら。やっぱり舞台中はどうしても減っちゃうので。」
添田「注目すべきは、お腹にいながらも自分のペースでレッスンを重ねてきてどう復帰できるかですよね。」
内田さん「そうですね、とりあえずあまり弱気になるのも嫌なので、今までトレーニングを続けてきています。それじゃなくても出産後って身体が全く変わると聞きます。今もジャンプをしていないだけで、復帰後ちゃんと飛べるのか心配です。
とりあえず体重が増えた分、足にウェイトをつけていると思って、レレベとかを必ずやって足の筋力をなるべくキープしようと心がけています。」
添田「筋肉って戻っていくのも早いですし、骨盤がどうしても動いて、腰の骨の位置が変わるんですよね。」
内田さん「きっと、感覚かなんか変わっちゃいますね。腰が広がっちゃう。かかりつけの整体の人にも診てもらっています。
産後も必ず整体でアジャストしてもらおうと思っています。あとはベルトとかですよね。」
添田「そうですね。私も出産で入院するとき、看護師さんに若いうちは筋肉あるし(骨盤も)戻るから、ガードルを持って入院してきなさいと言われました。」
内田さん「出産後は、かかりつけの先生に相談して治療してもらいます。」
所属先のカンパニーの協力を得て
シンガポールダンスシアターメンバーと
添田「カンパニーの理解も大きいのでは、と思うのですが、妊娠中でも動くのを止めたりはされていないんですね。」
内田さん「妊娠が発覚してからは、”もう公演は出ません“と伝えましたが、毎日朝のレッスンには参加するという方向で話が決まりました。
所属先のカンパニーでは、ダンサーとして妊娠して今もキャリアを続けているという前例が無いんです。
カンパニーにとっても初めてなので、向こうも探り探りなんですよね。
妊娠がわかる前の妊娠初期の不安定な時期に、ドンキホーテを全幕踊っていたので、私としては、公演は“もういいかな”と思いました。
朝のレッスンを受ける以外には、リハーサルのお手伝い、レッスンを教えるお手伝いなどをしています。
カンパニーからは理解をしてもらえて感謝しています。」
添田「ディレクターはおいくつぐらいでしたか?」
内田さん「68歳の方です。これまでは、子どもがいて踊っていた先輩のダンサーの方がいましたが、産んでから入団されているんです。
私みたいに、妊娠して契約を継続して、というのは初めてなんですね。みなさん結婚して辞めているなどだったのですが、私はチャレンジしたいなと思って。」
添田「舞台に立っていなくても現役。現役続けながらのお産なんですね。」
内田さん「そうなんですよ。でも海外では出産後に現役へ復帰している方はいるので、それを見ていて、そういうこともできますかと昨年のうちからディレクターには相談していました。いいよ、ということだったので。」
添田「なるほど。私の娘がバレエ留学生時代に仲のよかったお友達がそういえばそうでした。」
内田さん「現役を継続して出産されたんですか。」
添田「そのようですね。復帰して今度二人目とのことで。」
内田さん「海外でも、慣れているところは制度もちゃんとしていて。」
添田「そのようですね。ヨーロッパのカンパニーではそういう制度があるんですね。」
内田さん「今、そういう人が増えてきているから、バレエ団もそれなりにサポートしてくれていて。
だからシンガポールの前例を作ろうと思っています。辞めるだけが(出産する時の)アクションじゃないと思うので。」
添田「私のHPで記事を検索されている方も、以前よりも留学するハードルがだいぶ低くなっているし、ゆくゆくダンサーとして結婚して出産して、を意識している人、結構いるんだと思うんですよね。」
内田さん「みんなやっぱり考えているんですね。特に女性は踊る以外のことも考えなくちゃならないから、本当に私も悩んでいて・・・でも踊りは諦められないし、でも母にもなりたいし。
しばらく経って、今になってしまったんですけどね。うん、でもタイミングもよかったんじゃないかなと思っています。」
現役を続けるか、子どもか。次のステップを考えるうちに見つけた「現役復帰」の道
添田「旦那様からは、現役を続行することも、妊娠中から動くということも反対されなかったのですね。理解してくれて。女性としては励みになりますよね」
内田さん「そうですね」
添田「想像の域ですけど、もしそこで現役続けるのはちょっと・・・と言われていたらどうしていたと思いますか?」
内田さん「そしたら、わたしはまだ踊っていたかもしれませんね。子どもを作ることを決断できなかったかもしれません。
復帰する未来もあるんだと思ったときに、“あ、じゃあ子どもを(作ろう)”となったんです。
それまでは、まだどうしてもバレエを続けたい気持ちの方が勝っていて、その先のステップにいけなかったんです。」
添田「なるほど」
内田さん「もしかしたら、彼としてもう少し早いうちに欲しかったかもしれません。
とはいえ結婚したのも2年前なので、そういうことを考えたら、遅いってわけではありませんが・・・
彼としてはもう少し早めに人生の次のステップを考えていたところがあって、でも、私はまだ踊りたくて、という。
色々ある将来のチョイスを考えていたんですね。
ゆくゆくは、日本に帰ることだけではなく、シンガポールでお教室を開くことも可能なんじゃないかとか、そういう話をいろいろすすめていくうちに、時間も経って、彼も様子をみるという感じに考えを少し変えてくれて、それで今に至っています。
(以前は)出産=辞めなきゃいけないという考えしかなかったので、だからまだ踊りたいまだ踊りたいという気持ちだった。“復帰もできるんじゃないか”となった時に、もうすぐ子どもがほしいねという(方向へ)。」
添田「なるほど、価値観が変わったと。子どもが生まれたらもう引退なんだという概念がどこかでなくなったんですね。」
親御さんからの後押しが大きな励みに
内田さん「(その概念が)なくなったときになんだかすっきりして、じゃあもう産んでからでも、と思ってうちの親にも相談したら、“それいいんじゃない”って。“ダンサー、みんな復帰しているじゃない”って、うちの親はそういう考えだったので、後押しになりました。」
添田「自分の気持ちに賛同してくれたんですね。」
内田さん「本当にあの瞬間は嬉しかったですね。それ以前は、出産を期に引退することを前提に、私はいつまで踊っていけるのかを母に相談していました。母は出産は35歳過ぎても大丈夫じゃない?って言ってくれていました。でもその後、出産後の復帰という考えが芽生えて、改めて母に相談してみたら、それはいいじゃない、と。」
添田「お母様が、千裕さんの考えを尊重されていらっしゃるのですね。」
内田さん「確かにそう思います。私の人生を考えてくれているていうか、シンガポールでバレエを続けていけるという考えを賛成してくれたことがすごく嬉しかったですね」
お孫様を抱っこするお母様
編集後記
インタビュー時、内田さんは妊娠7カ月にさしかかるころで、その頃まで身体を動かしている様子もSNSで発信しながら、ご自身らしくマタニティライフを送られているようでした。
私が知る限り、女性のバレエダンサーの結婚、出産、現役復帰については、これまで前例がなかったわけではないものの、日本人のダンサーのロールモデルを知る機会はあまりなかったように思います。
内田さんの「シンガポールでの前例を作ろうと思って」のひとことに、彼女の冒険心、チャレンジする心が込められていると感じました。
私自身の「バレエダンサーの母」の立場で見ていても、バレエダンサーの現役経験をどう将来に生かしていくか、どう本人が向き合っていくかは大きなテーマです。
内田さんがリアルタイムで見せてくれた「続けるか、辞めて産むかだけではない。復帰もある!」の選択肢が、どなたかの役に立てば良いな、と考えています。
夢を叶えることはひとつの通過点で、結婚、出産後とご自身らしくキャリアを積みながら歩んでいくバレエダンサーの方が増えればなおのこと喜ばしいですね。私としてもぜひ応援したいです。そんな背景から実現したのが、今回のインタビュー記事でした。
追記:この原稿の編集中に、内田さんが無事第一子をご出産したとのニュースが飛び込んできました。本当におめでとうございます!
インタビューに応じてくださりありがとうございました。これからも応援しています!
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